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2007/05/05

Hold Me Tight(ホーミタイ)あんた あたしの・・・

プロローグ

上田正樹熱唱の『悲しい色やね』の有名なフレーズ。
作詞:康珍化、作曲:林哲司の名曲である。

 

1.中古車事情

日産のワゴン車で“Homy”と言う車がある。

沖縄ではメーカー側の配慮にて販売されず、同型車の“キャラバン”が販売されてた。

困るのは、中古車で大量に内地から流通される“Homy”が平然と市中を徘徊していることだ。

 

2.子宮で聞く声

先日、異様な音を聞いた。
いや、声なのだ。

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若干24歳のJ.タバースレン氏の喉唱で、モンゴルの西部アルタイ山脈の部族に伝わるという、現地語でホーミーと呼ばれる独特の音楽らしい。なんでも、喉・鼻・胸・頭蓋骨を使い、笛の様な高音と低く搾り出す様な低音を、下腹から圧力を掛け一人の人が同時に出し、共鳴させる発声法と聞いた。

類似の音を日本で探れば、浪曲師の声、縁日の香具師の声、日常では「竹や~竿だけ~」の声が上げられよう。

だが、ホーミーの声は迫力が異なる。

さざ波の様にやさしく、地獄の様にオドロオドロしい、声なのだ。

 

この何処となく懐かしい音色を司会者は「大自然からのメッセージ」と説明していたが、私は子宮の中で聞いていた筈の母親の声のような気がした。

 

 

3.披露宴は潰れた

清水君の結婚式は、埼玉は飯能市のお寺の、仏前で執り行われました。

披露宴もそのお寺の中で、ご親戚やお友達の代表・会社関係代表者たちで、極めて一般的に開かれました。

 

新郎新婦のご新居は新郎の職場のある久米島です。

島内からの参加者は会社の社長と私のみでした。

遠方なので仕方ありません。

 

そこで、島で作った新郎の友人達から「島でもう一度披露宴をするベーよ。」との声が上がり、あっという間に段取りが出来上がりました。

2期工事で竣工したばかりの久米アイランド付帯多目的パーティー会場のこけら落としをも兼ねて、ホテル側の全面的バックアップもあり、100余名の人が集まりました。

もちろん、両家のご両親様は招待した上でのコトです。

 

沖縄の披露宴は地域の宴席と理解していただいた方が早く、親族一同はその接待役で、三線・民謡・琉舞・寸劇等を会場付帯のステージ上で披露するのがしきたり。

そして最後は出席者全員のもとカシャーシーでお開き。

 

今回の場合は新郎のご友人たちの主催なので舞台は彼らの持ち場です。
滞りなく式次第が進行し、島の人達はなんと芸達者ぞろいなのかと感服していたところ、既に泥酔状態の新郎が新婦の手を引いて、唐突にステージに上って行きました。

もちろん、式次第には無い飛び入りでした。

身長185㎝と145㎝のカップルの登場に会場からは沢山の拍手や指笛の嵐。
彼はマイクを握り歌い始めました。

 

♪ にじむ街の灯りをふたりみてた

 桟橋に止めた車にもたれて

 泣いたらあかん 泣いたら

 せつなくなるだけ

 

HOLD ME シ TIGHT 大阪ベイブルース

おれのこと 好きか あんた聞くけど ♪

 

新郎が沖縄でGetした18番の歌です。

 

♪ HOLD ME  TIGHT そんなことさえ

わからんようになったんかい ♪

次第に声が大きくなります。
小さな新婦は新郎の大きな腕で抱きしめられたまま逃げられません。

♪ HOLD ME  TIGHT 大阪ベイブルース・・・♪

とうとう新郎はステージの上で新婦を押し倒してしまいました。
ホーミしたい!ホーミしたい!と叫びながら。

 

ご両親様の眼の前です。

彼の歌う屈曲された歌詞の意味は解らないとしても、これはまずい。

あわてた私は、舞台裏に駆け込みスポットライトを消し、幕を下ろす一幕。

 

4.アナウンサーの試練

NHK 那覇放送局7時のニュースから。

「今年も那覇市内の桜の名所漫湖公園の桜が満開の時期を迎えています。漫湖公園では家族連れや・・・・」
ヤマト姓を持つアナウンサーの顔が強張る、恒例の早春の話題。

 

エピローグ
♪ 大阪の海は悲しい色やね

   さよならをみんなここに捨てに来るから

    夢しかないよな男やけれど
     一度だってあんた 憎めなかった
  HOLD ME TIGHT 大阪ベイブルース
   河はいくつもこの街流れ
    恋や夢のかけら
     みんな海に流してく
  HOLD ME TIGHT 大阪ベイブルース
   今日でふたりは終りだけど
  HOLD ME TIGHT あんた あたしの
   たったひとつの青春やった ♪

 

2007/05/05

 

あとがき

J.タバースレン氏はホーミーだけでなく馬頭琴・笛及び口琴の奏者でもあります。

ネックの先端が馬の首先にデザインされている事から馬頭琴と呼ばれているようで、白樺の木から総て手作りで、モンゴル政府では今『一家に人竿』キャンペーン実施中とのことでした。

 

馬のシッポを紙縒んだと言う弦は2本しかなく、J.タバースレン氏は、それを親指も含んだ左手5指総てを小刻みに動かし演奏していました。

六弦のギターを5指で弾く困難とは裏腹に、得体の知れない指捌きを間近で見てしまいました。

 

笛は横笛です。

演奏後、幸運にも現物を触診する機会に恵まれた競輪選手の証言では、音楽の授業で使うリコーダー同様に塩ビ製で二分割可能な楽器とのコト。

奴はその横笛を縦に吹いたりする。

 

圧巻は、“オーソレミヨ”の独奏。怪物は最後の音を、息継ぎしないまま何と2分の間、吹き続けた。

これは無呼吸潜水記録を誇る“河童・中川”に於いても不可能なことだろうが、私は看破した。

その妖怪は口で笛を吹きながら、鼻で空気を吸っているのだ。

 

口琴=むっくり、北海道や沖縄を旅した人は土産物屋で手に入れられる。

竹を網針様に細工して口に咥え、一方に通した紐を引いたり弾くコトで音をだし、口腔内でその振動を共鳴させて、ラウジサウンドとして聞かせる楽器。

 

今回、化け物が用意してきた口琴は二種類。

オーソドックスなむっくりとは別に金属製の物をしたためていた。

それは大き目のクリップの様に遠目で窺え口唇にスッポリと収まった。

 

若者の右中指が化け物の右頬を無造作に叩く。

ビヨーン・ビョン・ビヨーン、耳なし法一の琵琶の音が会場いっぱいに響いた。

日本が誇る、横綱を奪われ、忍者をも奪われた一瞬だった。

沖縄公演は危ない。

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