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2024/06/09

赤魚粕

最近、粕漬けをあまり見かけなくなった。
奈良漬もまたしかり。
漬け魚界では素材に風味を与えてくれる、西京に勝るとも劣らない、優秀な副材料だ。

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日本酒を絞り取った後の米のカス。
昔は、粕汁にしたり、甘酒をこしらえたり、板粕を素焼きにしておやつにしたり、魚肉や野菜を漬けたり、活躍の場所がたくさんあった。
昭和人の飲んだ日本酒のピーク量は年間170万kℓ。比べて令和4年人のそれは40万kℓ。
酒粕は酒の生産量の10%なので、彼の時代よりも粕自体もおよそ1/4まで減っている筈だが、それでも40万tもある。
飼料にも利用されない余り物は廃棄されていると聞く。
もっとも、圧縮機械の普及でギューノネが出ないほどとことん絞られているので、近年の酒粕は本物のカスになってしまっているからかもしれない。

赤魚という名前の魚はおらず、北欧辺りでたくさん獲れる、赤い底魚の数種をひっくるめた総称。
日本には、ドレス加工され3㌔づつ投げ込みで凍らせた小箱を、マスターカートンに3枚重ねて入ってくる。

加工の為、1日数トンを処理する場合、解凍が一番厄介になる。
水道水を多量に使うと塩素によって赤が飛んでしまうため自然解凍が要求される。
気温との相談になる作業だが、真冬などは前日の夕暮れ時から、作業場の床・テーブルを問わず平らな場所に丸裸にして放置しておく。
日が当たるとあっという間に「白魚」になってしまうので要注意。

今はどんなメーカーも二つ割り機を使うが、当時は包丁の二枚卸。
まな板の前にかごを並べ、包丁を入れながら大小5段階に餞別して、かごに振り分けていく。
スピード勝負の職人芸。
完全に解凍されていないと包丁が途中で止まるので完全解凍が望まれる。
次いでダンべで塩水処理にまわる。

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オリジナル酒粕は、ほぐした板粕にレシピに基づき塩・砂糖・味醂・味の素・98%の酒精(絞り過ぎでアルコール分が足りないため)を添加して、大きな練り機で練り上げる。
魚の赤色を協調したいがために白い粕に仕上げるが、贈答用の詰め合わせの場合は別途「練り粕」という熟成させた褐色の粕を用いる。

塩水に漬け込むと魚の身はプリプリになって如何にも美味しそうに化ける。
粕を塗りながら平たい発砲の箱に上身下身左右一対で皮目を上に並べて冷凍する。

久しぶりに頂いた赤魚の粕漬け。
30年ほど前の出来事、思い出させてくれた。
2024.06/09 升

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